『パンズ・ラビリンス』と『迷子の警察音楽隊』 小松久子 杉並区議会議員
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2008 年 1 月 7 日     カテゴリ:映画・オペラ・おたのしみ
『パンズ・ラビリンス』と『迷子の警察音楽隊』
〜お正月に見た「戦争」と「平和」の映画〜
パンとはギリシャ神話に出てくる牧神のことで、ラビリンスは「迷宮」。だからパンズ・ラビリンスを直訳すれば「牧神の迷宮」となります。「ブラック・ファンタジー」「映像美の世界」というコピーはその通りですがPG−12にしては残酷シーンが多く、私が12歳だったら怖くて最後まで見ていられなかったと思います。

舞台は1944年のスペイン。「迷宮」の場面では気味の悪い異形の魔物がいろいろ出てきますが、怖いのはむしろ、主人公の少女を取り巻く現実世界の過酷さのほう。内戦後のフランコ独裁政権下でのレジスタンスに対する拷問、制裁など、少女の義父となった軍人(大尉)の残虐さには目を背けることたびたび。

しかしそれでも、この映画の放つ暗黒の輝きはすばらしいし、少女が果敢に試練に挑戦し血と涙を流しながらも成長していく物語にはひかれるものがあります。

うって変わって『迷子の警察音楽隊』のほうはCGなし、暴力シーンなし、物語らしい物語もなしの静かな映画ですが、人生を深く洞察した点や「平和」の本質を素朴に描いた点でとても優れた作品だと思うし、忘れられない一本です。

イスラエルに演奏旅行にやってきて迷子になった、エジプトの音楽隊の面々の心細そうな立ち姿。そろいの制服姿で砂漠の中に取り残された、楽器を抱えたおじさんたちの表情を見ただけで私はもう、この映画が大好きになってしまいました。

両国の関係はこの当時友好的とはいえないはずですが、その政治的な背景について映画ではまったく語られません。でも迷子のエジプト人たちを見逃せずに自宅に一晩泊めるイスラエルの庶民、という設定が語る希望は明らかです。

エラン・コリリンという監督の「なぜ私たちが平和を必要としているのか、その理由をさぐろうとする映画」という言葉がその証拠です。



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