日本語に字幕のある映画『バベル』 小松久子 杉並区議会議員
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2007 年 5 月 15 日     カテゴリ:映画・オペラ・おたのしみ
日本語に字幕のある映画『バベル』
〜一発の銃弾が放つ重さ〜
 聴覚障がい者には外国映画の好きな人が多い、とずいぶん前に手話通訳の人から聞いたことがあります。日本映画はダメ、外国のものに限る。「なぜならせりふ全部に字幕がついてるから」と言われ、あっと思いました。なるほど、字幕があるのは外国映画だけです。

当時、聴覚障がい者が主人公のTVドラマの人気が出て、手話の認知度が上がっていました。ところが手話の場面で字幕が出るのにほかの場面にはない、だから聴こえない者には筋がわからない。障がい者はドラマの素材として利用されるだけで当事者なのにドラマを楽しむことができない、ということでした。

最近封切られた映画『バベル』は、日本の俳優がアカデミー賞の候補になったことでがぜん注目が集まりましたが、日本語の場面にもすべて字幕がついた映画として公開されたことで、歴史的な作品になったといえるでしょう。

それは、彼女の役が聴覚障がい者ということで実際の聴覚障がい者が多数出演していて、かれらが試写を見たときに内容が理解できなかったため、映画会社に字幕をつけるよう署名活動して要求し、実現したのだそうです。

でも。字幕がつきさえすれば、寅さんも黒澤も、ホラーものだって、みんなが日本映画を楽しめるんです。障がい者が出ているかどうかに関係なく。映画に字幕をつけることくらい、今からすぐにできることです。その気にさえなれば。

『バベル』は、端的には旧約聖書の「バベルの塔」になぞらえて「言語や文化、気持ちが通じない」人たちの物語がつづられている映画、なのでしょう。ただ私がもうひとつ付け加えたいのは、たった一発の銃弾が放つ重さを伝えている点です。そのこともこの作品の価値として認められるべきと思います。

冒頭の銃弾がなければモロッコの少年は加害者にならずにすんだし、音を失った日本の高校生の孤独はもっと違ったものだったろうと思うからです。それにしても、少女のささくれた心情を体当たりで表現した菊池凛子には感服です。希望が見えた最後のシーンで救われた思いがしました。



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